18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
今度は遥がしばし黙り、それからため息まじりに返答する。
「誤解を招くようなことを言うな。でないとお前との契約を破棄する」
するとすぐさま絢は返答。
『そんなことをしたら僕はハルに頼まれて女子高生の盗撮をしていましたって世間に公表するからね』
脅すというよりも、面白がるような口調だった。
厄介だな、と今さらながら遥は思う。
絢との関係は高校生の頃からだが、それほど深く考えずに付き合ってきた仲だ。
絢の性格も打算的だが、それが自分と似ているので却って面倒なことはないと考えてきた。
それが、このところ絢は感情的な発言をしてくる。
そろそろ絢との関係を清算すべきなのだろうが、恐らく彼はそれを許さないだろう。
『ハル、約束は守ってくれるよね。君の【妻の席】はいろはちゃんに譲ったんだから、僕は君の【恋人の席】にいてもいいんだよね?』
遥は眉根を寄せて苦悶の表情を浮かべた。
そして彼は冷静に否定する。
「間違えるな。俺が与えたのは【友人の席】であってそれ以上の関係にはならない」
『冗談だよー。やっぱりハルは変わったなあ。前は軽くスルーしてたのに、最近はくそ真面目になっちゃって、つまんないね』
絢は電話の向こうで笑っているが、彼の冗談が冗談でないことくらい遥にもわかる。
「そろそろ寝るから」
と遥が話を終わらせると、絢は不満げな声を上げたが、最後に彼は言った。
『じゃあ、奥さんと仲良くね。僕の親友のハルくん』
こちらが発言する機会も与えられないまま、ぷつりと電話は切れた。
遥はしばらく無音になったスマホを冷めた表情で眺めていた。