18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
何度かキスを繰り返していたら、いろはは力なくうな垂れて、遥は彼女を抱えて耳もとでそっと名を呼んだ。
「いろは」
すると彼女は遥の肩をぎゅっとつかんで睨むように見上げた。
というよりは、どうすればいいのかわからないというような困惑の表情だ。
「遥さん、不意打ちは卑怯だよ。心の準備があるのに」
訴えるように投げかけられて、遥は苦笑した。
「そんなものなくてもいいよ」
「こっちはあるの。ハグだと思ったらキスなんて……それも、こんなすごいの、されたら……」
いろはは赤面しながら恥ずかしそうに俯いた。
遥はそれを見て我慢の限界を超えそうになり、指先で彼女の頬を撫でて、それから唇をなぞった。
「んっ……は、るかさ……」
「いろは、綺麗だ」
ぼそりと心の声が口からもれ出た。
いろはは頬を赤く染めたまま不安げな表情で見上げている。
彼はすぐそこの寝室に目をやった。
このまま抱っこしてそこに入ってしまえばもう、あとは止まらなくなるだろう。
遥は自身を落ち着かせるようにため息をついて、それからにっこりと笑顔を彼女に向けた。
「もう遅いから、おやすみ」
すると、いろはも笑顔になった。
「うん。おやすみなさい」
そう言って、彼女はパタパタと寝室に向かい、ドアを閉める直前にまた、にっこりと笑った。
廊下にひとり残された遥は、壁に背中を預けてしばらくじっと遠くを見つめた。
(ああ……もう少し……あと少しだ)