18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 遥さんはアトラクションに乗った直後、ぐったりした表情で遠くを見つめていた。

 その()はまるで死んだ魚のよう……。


「どうして乗れないって言ってくれなかったの? 苦手なのに無理して」

「いや……いけるかと思ったんだけど」

「無理しちゃだめだよ」

「……そうだね」


 やや足もとがふらついている彼を支えながら、私は空いているベンチへ向かった。

 そして彼を座らせると、その顔色をうかがった。


「頭痛くない? 吐き気とかない? 眩暈とか」

「いや、大丈夫。それにしても、結構すごいね。脳みそも心臓もぜんぶ持っていかれるかと思った」

「遥さん……本当に苦手なんだね」

「もう若くないしね」

「若さとか関係あるかな?」


 彼は横目でじっと私を見つめた。

 それはまるで、よくこんなものに嬉々として乗れるなあ、とでも言うような目だ。
 

「ごめんなさい。私が浮かれすぎてて」

 ああ、失敗した。

 私は自分のことしか考えていなかった。

 そうだよね。遥さんは大人なんだから遊園地じゃないよね……。


「映画か水族館にすればよかったね」

「いや、いろはが行きたいところにと俺が言ったからね」

「でも……」

 遥さんは私の手を握って微笑んだ。


「遊園地は思い出の場所なんだよ。だから、いろはが来たいと言ったとき、懐かしくて嬉しかった」

 彼は笑っているけど、困惑したような表情で言った。


< 267 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop