18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 思い出の場所って、もしかして昔の恋人と一緒に来たのかな?

 そんな考えが一瞬、浮かんでしまって、つい訊ねてしまった。


「誰と来たの?」

「母親」

「えっ」

 少なからずほっとした。

 よく考えてみたら、元カノと来た場所だなんて、遥さんが言うわけないよね。

 私ったら変なこと考えすぎ!


「遊ぶことに厳しい母だったから、学校の遠足さえ欠席させられたのに、なぜか遊園地には連れて来てくれたんだよ。1回きりだけどね」

 そう言って穏やかに微笑む彼の表情は、いつもより綺麗に見える。

 だから、素直に思った。


「遥さん、お母さんのこと大好きだったのね」

 そう言うと、彼は少し驚いて、それから苦笑した。


「特別なことじゃないよ。まだ10歳にも満たない子供なんて母親がすべてだろう」

 当たり前だとでも言うように、さらりと話す彼に、私は少なからず胸が痛くなった。


 大好きな母を10歳で亡くすなんて、私には考えられないし、その辛さを理解することも到底できない。

 ふと、おじさまの言葉を思い出した。


 『あの子の母親が亡くなったときも、私は仕事で留守にしていて看取ることができなかった。それを恨んでいるのかもしれないな』


 おじさまとのことを聞きたいとは思うけど、まだ話せるような時期じゃないよね……。


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