18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

「ああーっ! パンダ好きのおねえちゃんがいちゃいちゃしてるう!」

 聞いたことのある声がして驚いて振り向くと、さっきの迷子の女の子が風船を持って立っていた。

 慌てて遥さんから離れて女の子に声をかける。


「わー偶然。今のは違うんだよ。ちょっとこのお兄さんとおしゃべりしていただけなの」

 そう言うと、遥さんがにこにこしながら「この子は?」と訊ねた。


「あ、さっき迷子になってた子なの。すぐに家族と会えたからよかったんだけど」

 また迷子になっていないだろうかと周囲を見まわし、あさひちゃんという女性を目で探した。

 すると、女の子が大きな声で言った。


「おねえちゃん、うわきしちゃだめよ!」

「え!?」

 遥さんがとなりで「うわきって何? いろは」と笑顔で訊ねた。


「違うよ。何か勘違いしてるの! ねえ、私、浮気なんてしてないよ!」

 私は遥さんに説明をしたあと、すぐに女の子に忠告した。

 だけど。


「うそ。パンダさんのこと好きでしょ?」

「パンダ?」

 遥さんはとなりで口を押さえてクスクス笑っている。

 もう、これ以上変なこと言われると困る。


「ねえ、今はひとりじゃないの?」

「うん、お兄ちゃんたちがいるよ。ほら」

 女の子の指さすほうから小学生の男の子ふたりが玩具の水鉄砲で撃ち合っていた。

 しかし、もうひとり(とし)の離れた男の子がいた。

 小学生のふたりよりも背が高く、言うなれば私と同じくらいの男の子。


 私は彼をよく知っている。

 女の子は彼に駆け寄って、私を指さして言った。


「ねえ、いぶき。あの人が風船をくれたパンダさん」

 男の子と目が合った瞬間、驚いた表情をされた。


「え……秋月?」



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