18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

「じゃあ、僕は行くからね」

 長門先生は小春に軽く手を振って笑顔のまま立ち去る。

 私は顔を会わせたくなくて、彼が横を通り過ぎる際、うつむいた。

 しかし、彼は通りすがりにぼそりと言った。


「社会人の彼、か」

 どきりとして顔を上げると、長門先生は真顔で私を見て言った。


「いいね。甘えられて」

 思いがけない言葉と態度に、私は何も言い返すことができず、ただ呆然と立ち尽くした。


 甘えている。確かにそうだ。


 稼ぎのない私は生活費のすべてを遥さんに頼っている。

 それどころか、食事の準備や片付けも手伝ってもらっているし、その上勉強まで見てもらっている。


 甘えているどころか、まるで寄生している。

 たぶん、長門先生にはそのように見えているのだろう。


「いろは? どうしたの?」

 私がその場から動かなかったせいか、小春が首を傾げながら訊ねた。


「あ……えっと」

 長門先生の表情が頭に焼きついてしまった。

 真顔、というよりはもっと嫌味のある顔だった。

 いうなれば、見下すような表情。

 そして見下すような言葉。


「長門先生の特別な人ってどんな人なんだろうね。めっちゃ気になる」

 わくわくするようにそんなことを言う小春に、私はただ笑みを浮かべるしかなかった。

 まさか、本当のことなんて言えないし、言ったとしてもいろいろ複雑で、どう説明したらいいのかわからない。


 前から薄々思っていたけど、やっぱり、長門先生は私にあまりいい感情を持っていないのだ。



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