18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
どこかにいろはがいないだろうか、と遥は周囲を見わたした。
メイド姿の女子は頭に動物の耳をつけている。
ウェイタ―姿の男子もそうだ。
「お待たせしましたあ! ご注文はパンダですか?」
パンダの耳をつけたメイド女子を遥は真顔で見つめた。
一瞬その場が凍りついたような沈黙があったが、朝陽が慌てて声を発した。
「え、えっと……あたしはチョコレートケーキセット!」
「注文するの?」
「え、だって……せっかくですし」
額に汗をかきながら懸命に笑顔を向ける朝陽に向かって、遥は真顔でため息をついた。
「コーヒーで」
結局注文をした。
メイド女子は「かしこまりましたーパンダテーブルご注文でーす」と大きな声で叫び、周囲から「ありがとうございまーす」と声援のような反応があった。
遥は黙ってスマホを取り出し、いろはにメッセージを送ろうとした。
文字を打ち込んでいる途中、朝陽に話しかけられた。
「あの、ご家族の方はどの部活なんですか? 何か出展されてるんですか?」
遥は顔を上げて答える。
「ああ、イラストをね」
「え? 漫画研究部ですか?」
「ああ、推し……」
その名称を口にするのは少々抵抗があったが、朝陽が思いついたように声を上げた。
「もしかして『推しを愛でる会』じゃないですか?」
キラキラと瞳を輝かせる朝陽がまるで、ポテトチップスに進化したように、遥には見えた。