18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
< 朝陽 >

「このあと例の部の展示に行きます?」

 と朝陽が言うと、遥は一瞬黙ったが、すぐに「ああ」と悟ったように返事をした。


「そうだね。目的地は一緒だしね」

「ご家族の方はどんなイラストを描いてるんですか?」

 朝陽がにこにこしながら訊ねると、遥はさらりと答えた。


「漫画の2次創作かな」

「そうなんですか。ところで、妹さんですか? 弟さんですか?」

 自然の流れで訊いたつもりだった。

 遥は少し黙り、それから特に隠す様子もなく答えた。


「奥さん」

「え……?」

 朝陽は一瞬、耳を疑った。


「あの、今なんて……?」

「奥さん。ここの学校に通ってる」


 朝陽は体が硬直し、思考が止まった。

 さっきまで動物カフェのメイドたちがきゃっきゃと接客をしている声で騒がしかったのに、今は無音のような状態だ。


「秋月課長……ご結婚されて、いたんですね」

 朝陽はなるべく表情を変えないように努力した。

 しかし、頭の中は大混乱である。


「知らなかった……たぶん、会社の人みんな知りませんよね。指輪だってしてないし……」

「そう。だから、まだ周囲には言わないでくれるかな? 結婚式は彼女が卒業してからするつもりだから」

「……わかりました」


 朝陽は♡柄のラテをぐいっと飲んだ。

 模様はぐちゃぐちゃに崩れていた。


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