18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
それから朝陽は彼と何を話したのか覚えていない。
偶然の出会いから運命だと感じた少しの時間、からのどん底だ。
こんなことになるなんて、思いもしなかった。
目的の展示がされている教室へ辿りついたが、朝陽はそれを楽しめる気分ではなかった。
「あの、私ちょっと用事が……」
「え?」
「すみませんが、ここで失礼します」
ぺこりとお辞儀をすると、遥は穏やかに微笑んだ。
「案内してくれてありがとう」
「い、いいえ。では」
これ以上、彼の顔を見ることはできなかった。
朝陽はキラキラ眩しい青春を謳歌する生徒たちのあいだを走り抜けた。
涙を堪えて。
校舎から出て中庭みたいな場所まで走った。
人がいないところで思いっきり泣きたかった。
足下をよく見ていなかったので、段差につまずいて派手に転んだ。
「いたあっ!」
両手をついたが、膝を擦りむいてしまった。
手のひらからも血が滲んでいる。
「あはは……なんて惨めなんだろう」
勘違いしていた自分に対しても恥ずかしかった。
彼の優しさは、ただ社員としての社交辞令に過ぎなかった。
それを脈ありかもしれないなんて、ずいぶんとお花畑な頭をしていたのだなと思った。
「ううう……バカだな、あたし……バカだ」
地面に座り込んだまま泣いていたら、突然声をかけられた。
「君、大丈夫?」
白衣を着たアイドルみたいな顔の男が立っていた。