18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

「というわけで、あたし失恋しちゃったんです」

 女は帰るどころか居座り、愚痴をこぼし始めた。


「いや、聞いてないけど」

 と絢はデスクで作業をしながら呆れ声を出した。


「はぁ……しかも、その人の相手がここの学校の生徒だって言うんですよ。もう、いろいろとびっくりしすぎちゃって、失恋と驚きで頭ン中パニックで」

 絢は紙に走らせていたペンを止めた。


「それ、誰?」

 訊ねると彼女は「あっ」と手で口を押さえた。


「もしかして、そういうのまずいですか? 生徒が社会人の男と関係があるなんて、先生として知っちゃうのは」

「いや別に。学校でなければ自由だし」

「そっか。ああ、でもまさかあの人が女子高生と……年下のお嬢様っていう噂はあったんだけど、やっぱりお嬢様なのかしらね」

 絢はもやもやして、強い口調で訊ねた。


「だから、誰?」

 言ったあと、絢はハッとして彼女から顔を背けた。

 つい感情的になってしまった。


「あの、それを知ってどうするんですか?」

 と彼女が冷静に訊ねた。


「どうもしない。ただの興味本位」

「ふーん。でも、相手の生徒のことは知らないんで、すいません」


 絢は小さく舌打ちした。

 本当に、イライラするから早く帰れよと思った。


 そのとき、ゆっくりと扉が開いた。



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