18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「あれ? 朝陽、何やってんの?」
入室してきたのは伊吹だった。
あの日から彼は保健室に来なくなっていたのに、珍しいなと絢は思った。
「伊吹ぃ~、探したのよ」
甘えた声で伊吹に近づく朝陽を呆れ顔で見つめて、絢は言った。
「香取くんの知り合い? 早く連れて帰ってよ。仕事にならないんだけど」
「あー、すいません。ていうか、何その怪我。転んだのかよ?」
朝陽の膝を見た伊吹が心配そうに声をかける。
絢はふと、ひらめいた。
「お姉さん、失恋したんだって」
「ちっ、ちょっと! いきなりそれ言う?」
抗議する朝陽に向かって絢は笑みを浮かべた。
「姉じゃなくて親戚。ていうか、朝陽もなんで学校でそんな話してんだよ」
「ううう、だって……この人が」
指をさす彼女にすかさず絢が返す。
「僕は何も聞いてないよ。彼女が勝手にしゃべっただけ」
「そうだ、伊吹。気をつけて! あんたよく保健室でさぼってるって行ってたけど、この人男好きなの! あんた、たぶん狙われてるわよ」
伊吹は怪訝な顔で朝陽を見て、それから絢に顔を向けた。
絢は満面の笑みで伊吹に訊ねる。
「そういえば香取くん。秋月さんとは最近どうなってるの?」
伊吹は真っ赤な顔をして硬直した。
「へ? あ……え? 秋月って……?」
朝陽はひとり狼狽えながらふたりの顔を交互に見つめた。