18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
司会者にマイクを向けられた長門先生は、黙ったまま遥さんを見つめている。
なかなか答えがないせいか、周囲がざわつき始めた。
「先生、なんか顔怖くない?」
「いつもの雰囲気とちょっと違うよね」
「恋のキューピットじゃなくて、もしかして」
「三角関係ってやつじゃない?」
周囲の生徒たちの憶測が飛び交っている。
このまま長門先生が何も言わなければ、私と遥さんと先生が三角関係だなんて噂が広まってしまう。
「……遥さん」
不安になって見上げると、彼は先生に目を向けたまま「大丈夫」と私に言った。
長門先生が、少し目線をずらして私を見た。
どきりとして、私は硬直した。
彼の瞳がなぜだかとても、寂しそうに見えた。
長門先生はため息をついて、また遥さんに目を向けた。
そして、彼は笑みを浮かべて言った。
「おめでとう、ハル」
その瞬間、周囲がまた「わああああっ!」と歓声を上げた。
「これは、学園始まって以来の大事件ではないでしょうか! なんとこの学園の生徒と先生とお友達との熱い関係! まさに学園史に残る出来事です!」
司会者がカメラに向かって鼻息荒くしゃべりまくる。
「いろは~。あたし、感動して涙出ちゃったよ」
と小春が本当に涙目で私に抱きついた。
「あ、ありがとう」
私はまだこの状況に頭がついていかないまま、小春を抱きしめた。
長門先生に目を向けると、彼はどこか遠くを見ていた。
伊吹くんは、どこにもいなかった。
朝陽さんは、遥さんと何か話していた。
私の高校生活最後の学園祭は、とんでもない出来事で強烈に記憶に刻みつけられたのである。