18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 誰も、味方はいない。

 そもそも生まれてきてはいけなかったようなので、もういつ死んでもよかった。


 だから、絢はいじめられて殴られても、最後のほうは抵抗しなかった。

 このまま殺してくれれば楽になれるし、さすがに殺人が起こったら学校も黙ってはいない。


 おそらく世間に糾弾されるだろう。

 そんなときに、遥と出会ったのである。


「抵抗しないんだ。死にたいの?」

 ある日、殴られて地面にうつ伏せになっていたら、遥が近づいてきて言った。


「死んでもいい。どうせ、生きててもつまらない」

 と絢が答えた。

 すると遥は心配するどころか、笑った。


「あはは。君って俺にそっくりだな」

 一緒にするなよ、と絢は思ったが口にする気力もなかった。


「助けてほしい?」

 と遥が訊ねた。

 絢は急に胸が苦しくなり、涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。


「た、すけて……ください」

 誰にも言えなかった言葉を、初めて誰かに言った。


 遥はうつ伏せの状態の絢の頭を撫でた。

 絢はかつての【父親(こいびと)】のことを思い出して、また涙がこぼれた。


「わかった。今日は泣けばいい。明日には最高に笑っていられるから」


 遥は笑いながらそんなことを言った。

 絢にはその意味がよくわからなかった。


 ただ、遥の手はとても、絢を安心させてくれるものだった。


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