18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
伊吹くんはしばらく私に笑顔を向けてくれていたけど、急に私の背後に目をやって「あっ」と声を上げた。
「秋月、迎えが来たよ」
「え?」
彼の視線に向かって私が振り返ると、そこには遥さんがいた。
「じゃあ、気をつけてな」
「うん。また学校で」
伊吹くんは遥さんに軽く会釈をして帰っていった。
遥さんも彼に笑顔を向けていた。
伊吹くんを見送ってから、私は遥さんに訊ねた。
「いつからいたの?」
「ずっといたよ」
「え?」
驚いて見上げると、彼は当たり前だとでも言うような笑顔を向けた。
「気づかなかったよ。隠れて覗き見するなんて……」
遥さんのことだから、どうせ面白がっているんだろうなと思うと、なんだかモヤモヤした。
すると、彼は真面目な顔で意外なことを言った。
「覗き見ていたわけじゃないよ。俺は彼に玉砕の機会を与えてあげたんだ」
「どういうこと?」
遥さんは笑みを浮かべながら言う。
「きちんと振られたほうが、心の整理ができて次へ進めるだろうから」
「わざと声をかけなかったの?」
「ここで邪魔をするなんて野暮だろ」
ちょっとびっくりした。
遊園地のときはあんなに伊吹くんを牽制していたのに、一番大事なときは見守ってくれていたのね。
なんだか、大人だなあって、改めて思ったりした。