18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

31、私が守るべきもの


 冬休み明けの新学期。

 学校に来ることで少し気分が軽くなった。


 遥さんとはずっと家のことに関する話題は避けている。

 悶々とした時間だけが過ぎていき、何も解決しない。

 本当に、このまま、彼は両親と縁を切ってしまうのだろうか。


「なるほど、そんなことになっていたのね。あんたもまた大変なところに嫁いだわねえ」

 ひとりで抱えきれない私は、由希ちゃんに相談を持ちかけた。


「どうしよ。私が何か言えば遥さんはすごく怖いの。怒らせたくないからこれ以上何も言えないよ」

「まあ、触れられたくない部分なんだろうね」

「家族なのに、あんなに仲が悪いなんて、本当に信じられなくて……」

「あんたの家が特殊なのよ。まあ、箱庭で大事に育てられたあんたには理解しがたいだろうけど」

「箱庭……」


 苦笑するしかない。

 由希ちゃんは腕組みをして、急に何か思い出したように宙を見上げて言った。


「あたし、その由香里さんの葬儀に行ったわ」

「え? 遥さんのお母さんの?」

「うん。小学校低学年の頃よね。お母さんに言われて親戚中に挨拶してたんだけど、ひとりだけ無視されたのよ。嫌な子だなって思ったけど、あとで事情を聞いて複雑な気持ちになったわ」

「遥さんだったんだ」

「そりゃ親を亡くして元気に挨拶なんてできるわけないよね」


 由希ちゃんが小学校低学年。

 ということは遥さんは3、4年生ということだ。

 私だったら耐えられないかもしれない。


< 385 / 463 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop