18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「という話をなぜ君たちは保健室でするの?」
ずっと私たちふたりで話していたら、デスクに向かって作業をしていた長門先生がくるりと振り返って言った。
「えっと……ごめんなさい。ここしか話せる場所がなくて」
私が言いわけをすると長門先生はため息をついた。
「君たち、いとこ同士ならプライベートで会えるだろ。それとも何? 僕に助言でもしてほしいわけ?」
「あら、そこまで求めてないけど、何か助言してくれるの?」
「ため口かよ」
由希ちゃんの発言に、長門先生が苦笑する。
それから彼は、私に向かって真面目な顔で言った。
「じゃあ、ひとつだけ言う。ハルを懐柔するなんて不可能だよ。彼には絶対に他人が入り込めない領域がある。僕も無理だし、いろはちゃんもその様子だと無理そうだね」
結局、私は何もできないのかな。
自分の無力さに嫌気がさす。
「どうすればいいんだろう?」
ぽつりと呟いた疑問を長門先生が拾って答えてくれた。
「何もしなくていい。君はただ、ハルのそばにいればいいんだ」
「え?」
「少なくとも、否定するようなことはしないであげてほしい」
「そんなこと……」
と言いかけて、私はうっかりおじさまと話し合いをしろと口出ししたことを思い出した。
やっぱり、私にはどうしても遥さんの行動が納得できなかったからだ。
「思い当たるふしがあるんだ」
と長門先生が面白がるように笑った。
ますます落ち込みそうになったとき、長門先生が真剣な表情で言った。
「僕もハルも子供の頃は孤独だった。だけど、支えてくれる誰かがいるだけで、生きてこられたんだよ」