18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 長門先生は立ち上がって白衣のポケットに両手を突っ込むと、私に近づいてきて言った。


「いろはちゃん、君は親からも周囲からも愛されて育って、本当の孤独を経験したことがないんだろう。目の前にあるのはとてつもない闇だ。未来なんか真っ暗で生きる気力さえなくなる」


 長門先生の表情は、まるでダークなときの遥さんそっくりだ。


「僕はハルと出会って彼が生きる支えになってくれた。ハルはおそらく僕より前に君と出会って、君が生きる支えになったんだよ」

 長門先生の表情が、少し和らぐ。


「わたし……何も、していないのに」

 遥さんのために何かをしたことなんて、まったく記憶にない。

 それなのに、彼はたまに大袈裟に思えるようなことを口にする。


『見返りはいらない。俺のそばにいてくれるなら、それでいい』

『世界でたったひとり、君だけを愛しているんだよ』


 出会ってこれまで彼が口にしてきた思わず顔を覆いたくなるような発言。

 私にはそこまで彼に想われるほどの魅力があるとは思えないのに、ずっと不思議でたまらなかった。


「それでいいんだよ。ハルはただ利用できるから僕をそばに置いただけ。でも僕はそれでクソみたいな自分の人生にも生きる希望を見出せた。きっと、ハルも同じ」


 長門先生は珍しく優しく微笑んで言った。


「ハルにとって君の存在は、生きる希望そのものなんだよ」


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