18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
遥は、今度はいろはを抱きしめて泣いた。
彼女の小さな体を抱いて横になっていると不思議と落ち着いて、やがて涙も止まった。
泣き止んだ遥を、いろははじっと見ていた。
怖がらないんだな、と遥は思った。
先ほど自分がしたことは何も知らない小さな女の子には恐怖でしかなかっただろう。
となりで屈託のない表情でじっと見つめる彼女に、申しわけないと思いつつも、心がほぐれていくのを感じた。
久しぶりに、心からほっとした。
「お前、俺のそばにいてくれるの?」
遥が何気なく訊ねると、いろはは「うん」と言った。
「どうやって? お前と俺は家も違うし、親も違う。一緒にはいられないよ」
遥は意地悪なことを言ってどんな返答があるか楽しんでいた。
いろはが真剣な表情で考え込むのを見て笑いそうになる。
彼女はしばらくうんうんと唸って、やがて思いついたように言った。
「いろは、おにいちゃんと、けっこんする!」
「えっ?」
予想外の返答に遥は驚き、絶句した。
彼女はにこにこしながら話を続ける。
「あのね、しんでぇら、ね……まほうで、どれすをきて、おしろいくの」
彼女は瞳をキラキラさせながら、絵本の内容を語って聞かせた。
「しんでぇらは、おうじさまにあって、けっこんするの。それで、ずーっといっしょなの」
いろはは「えへへ」と嬉しそうに笑った。
遥は驚き呆れ、そしてたまらなく可愛く思えて、つい笑みを浮かべた。
「子供のくせに、結婚が何かわかってないだろ」
「がらすのくつをはくのよ」
「もういいよ」
遥はぎゅっと彼女を抱きしめた。
そうしていると、不思議と穏やかになれたのだった。