18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
いろはは結局、目を覚ますことなく、父親に抱っこされて帰っていった。
そのあと、遥は美景に抱っこされた奏太を見て、妙に胸が痛んだ。
それからというもの、遥の心にわずかな変化が訪れた。
今まで奏太にまったく関心がなかったのに、時折気になってこっそり様子を見にいくのだった。
美景と話す気はさらさらなかったが、奏太には特別な感情を抱いているような思いがした。
親がどんな人間であれ、子供に罪はない。
あれから、いろはと両親は何度かこの家を訪れたが、遥がいろはと直接会うことはなかった。
彼はただ、自分の部屋からいろはと奏太が遊ぶ様子をこっそりと眺めた。
「やっぱり子供だな」
と遥はひとり呟いた。
意味もわからないくせに結婚するなどと言って、どうせすぐに忘れてしまうだろう。
いろはが結婚するとしたら年齢的にも弟の奏太が相応しい。
奏太にはこの家をやるつもりは毛頭ないが、いろはは譲ってもいい。
そんなことを考えて、馬鹿らしいと苦笑した。
「どうでもいい」
関係ない。
もう二度と会うこともない。
窓を閉めようとしたのに、なぜか手が動かなかった。
それどころか、体も動かない。
彼の視線の先には庭を走りまわるいろはの姿が映っている。
「いろは」
と遥はその名を口にしてみた。
彼はデジタルカメラを取り出して、おもむろにいろはの姿を追った。
そして、写真を数枚撮った。
それから動画も撮った。
「ママー、いろはも赤ちゃんがほしいー!」
母親のかえでは娘の言葉に苦笑するばかりだった。
その様子を見て、遥は口もとに笑みを浮かべた。
その夢、俺が叶えてあげようか――。