18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「2月と言えばバレンタインよー! さて、みんな推しのためにチョコ作るわよお」
すでに進路が決定している私と小春と伊吹くんは、後輩たちと一緒に小春のおうちに遊びに来ていた。
広いリビングに大きなアイランドキッチン。私たちはそのまわりを囲うように立っている。
作業台の上には製菓子材料とチョコレートだ。
「先輩、本命に作ったほうがいいんじゃないですか?」
という後輩の指摘に小春は呆れ顔で肩をすくめた。
「本当は長門先生に作ってあげたかったんだけど、ほらうちってチョコ禁止じゃない?」
「ですよねー。女子にとって勝負の日なのに」
「バレンタインのない学校なんて冷めちゃいますよねー」
「かなしみー」
みんなが愚痴をこぼしているあいだ、伊吹くんは黙々と湯せんでチョコレートを混ぜていた。
うちの学校はバレンタインなどのチョコレートを配りまわるイベントが禁止されている。
学園祭ではあんなに派手なイベントができるのに、なぜなのか不思議だ。
「とりあえずチョコ作ろ! あたし、推しの名前入りにするんだ。いろははダーリンのために作るのよね?」
急に小春に話を振られて、みんなが一斉にこちらへ目を向けた。
「リアルに相手がいるなんてうらやましいですう」
「カレシほしいぃ!」
どう言えばいいかわからず、とりあえず笑っておいた。
伊吹くんはとなりで黙々と作業を続けていた。