18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 正史郎は父親の命令どおり、由香里と結婚し、秋月家を継いだ。

 それでも縁あって出会った女性なので、妻を大切にしようと考えていた。


 結婚して間もなく、息子の遥が生まれた。

 その頃は家族3人で過ごす時間はそこそこあった。


 ただ、父の清十郎との同居は由香里にとってかなり厳しいものだったようだ。

 しかし、彼女は必死で遥を立派に育てようとしていた。


 父に逆らえない正史郎は、由香里がどれほど辛いと訴えてきても、秋月家に嫁いだのだから多少のことは耐えてほしいと言った。


 自分は長男でたったひとりの跡継ぎとして耐えてきたのだ。

 姉と妹は父から逃げるように家を出てしまった。

 自分は逃げることはできない。

 そして、その妻である由香里にも逃げてほしくはないと思った。

 その頃から由香里の様子がおかしくなってしまったのである。



 遥が5歳を迎える頃、正史郎は会社で大きなトラブルがあり、その対応に追われてほとんど家に帰れなくなってしまった。

 家のことは由香里に任せておけばいいと思っていた。

 だが、仕事が落ち着く頃に、異変が訪れた。


 久しぶりに早く帰宅した正史郎は真冬なのに外で立っている遥を見つけて声をかけた。

 遥は上着を着ておらず、薄着一枚だった。


「おとうさん!」

 遥がとても無邪気な笑顔で声を上げたので、正史郎は安堵した。

 なかなか会えなくても息子は父を忘れていなかったのだと。


「どうした? 外は寒いぞ。中へ入ろう」

「いけません。僕はいま、ばつをうけています」


 正史郎が、家族の異変に気づくきっかけだった。



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