18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
遥は母親の命じた課題を完璧にこなせなかったという理由で、真冬の野外に2時間も立たされていたのだった。
異常だと思った正史郎は遥の手を引き、自宅へ戻ると由香里を問いただした。
「こんな幼い子供に君は何をやっているんだ!」
由香里は反発した。
「遥の教育は私がしているの。あなたは口を出さないで」
「私は父親だ。口を出す権利がある」
「ほとんど家にいないくせに偉そうなこと言わないでちょうだい」
それを言われてしまっては、何の反論もできない。
だが、すべては家族を養うためなのだから、仕方がないのだと思っていた。
正史郎は使用人に由香里の動向を見て報告をしてほしいと伝えていた。そして、決定的な事件が起こったのである。
「奥さまは虐待をされています」
それを聞いた正史郎はまさか父の清十郎が手を上げているのではないかと危惧したのだが、実際は違った。
「おとうさん、おかえりなさい」
雪の降る夜に、遥は外に立たされていた。
頬が腫れ上がり、唇は何かで切って血が滲んでいた。
「遥、どうしたんだその顔は?」
「……ころびました」
正史郎は不審に思い、遥の腕をつかんで袖をめくり上げた。
「これはどうした? 怪我をしているじゃないか」
「ころびました」
「遥、それは叩かれたんだろう? 誰にやられた? おじいさんか、それとも……」
「ころびました!」
遥はまるで質問に対する答えが決められているかのように、同じことを繰り返した。