18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
「由香里に……お母さんにやられたのか?」
正史郎が訊ねると、遥は急に取り乱した。
「ちがいます。おかあさんはわるくありません。おかあさんは正しいです。わるいのは僕です」
正史郎は呆気にとられ、俯き、ようやく事態が取り返しのつかないことになっているのだと気づいた。
由香里に問い詰めると彼女はヒステリックに叫んだ。
「家にいないあなたが余計な口出しをしないでちょうだい!」
以前にそう言われたら何も言い返せなかったが、さすがに息子への仕打ちは見逃せなかった。
「由香里、お前のやっていることは躾けではない。虐待だ」
由香里は顔を真っ赤にして怒りの形相で叫ぶ。
「あなたは何も知らない! この家で何が起きているのか、私がどんな目に遭っているのか」
「それとこれとは別だ。どんな理由があれ、子供にあれほどの暴力を振るうなど母親のやることではないだろう!」
「よく言うわね。私のときは助けてもくれなかったくせに」
「由香里……?」
「あなたは私がお義父さまからどれだけ暴言を吐かれても、一度も助けてくれたことがないじゃないの!」
「それは……それとこれとは話が……」
「聞きたくないわ。とにかく、私はあなたの家の言うとおりにしているだけよ。お義父さまの命令どおりに遥を躾けているだけ。私は何も間違っていないわ!」
正史郎はこれ以上何も言えなくなった。
家の中も混乱しているが、会社も混乱している。
彼には両方とも対応するような力がなかった。