18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
正史郎は気力だけで生きていた。
外では決して病気であることを悟られないようにしたが、家庭でも安らぐことがないので精神はどんどん悪化の一途を辿った。心底逃げたいと思ったが、彼にはそれができなかった。
幼い頃から父親に洗脳されてきた彼は、決して父に逆らうことも、父から逃げることもできなかった。
やがて、由香里が病気になった。
しかし彼女はそれでも秋月家から出ることを拒み、最後まで自分が遥を跡継ぎにするのだと言い続け、父の清十郎に歯向かった。それはまるで執念だった。
由香里が亡くなったあと、遥は無口になった。
表情もなく、人形のように冷たい顔つきになり、誰とも話すことがなくなった。
清十郎は物忘れが激しくなり、医師から認知症の疑いがあると言われた。
彼は食事をとったことを忘れて幾度となく使用人に暴言を浴びせた。
夜中に正史郎の部屋に侵入し、怒鳴り散らした。
家具や物を破壊し、精神科の医師やカウンセラーが来てなだめることも多々あった。
さすがに包丁を振りまわしたときは使用人が恐れて警察を呼んだ。
秋月家は、崩壊寸前だった。