18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
遥は立派に育ったと思っていた。
何をさせても完璧で、すべてが上手くいくのだから、親としても誇り高かった。
ただ、遥はほとんど父親である自分と口を利いてはくれなかった。
彼が中学生の頃はそれが顕著で、反抗期なのだから仕方がないだろうと思った。
遥は美景には笑顔で接していたが、どこか距離を置いているようだった。
実の母親ではないから遠慮してしまうのだろうと、それも仕方のないことだと思っていた。
遥の望むように、高校からひとり暮らしをさせてやった。
遥は何でも完璧にこなすので、干渉する必要はなかった。
遥がいろはとの結婚を望んでいると聞いたとき、心の底から喜んだ。
すべてが上手くいっていると思った。
『俺はこの家と縁を切って会社も辞めて静かに暮らします』
寝耳に水だった。
跡継ぎとして立派に育ったはずの遥が縁を切るなど、想像もしなかった。
そのような様子を微塵にも感じさせないほど、彼は完璧に秋月家の長男を演じていたのだ。
そう、すべては演技だった。
美景への笑顔も、会社での顔も、穏やかで知的で冷静な姿もすべて、作り物だったのである。
それを知ったとき、正史郎は地獄へ落とされたような衝撃を受けた。
――やはり、私は、間違っていたのか――