18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 病室を出たところで、こちらに戻ってくる美景さんとばったり出くわした。

 遥さんは彼女に気づくと軽く会釈をして通り過ぎた。

 美景さんは驚くと同時に遥さんに体を向けて、深くお辞儀をした。

 遥さんはそれを見ることもなく立ち去っていったけど、私は会釈をしておいた。


 遥さんとおじさま、両方の見解を聞いても、本家のことをすべて理解できたわけじゃない。

 それに、おじさまが大変な目に遭ったからと言って、遥さんを傷つけたことは事実で、それを許せないという彼の気持ちに私は寄り添いたいと思った。


 それにしても、と古い記憶がよみがえる。


 ***


清十郎『泥棒じゃ! こいつを捕まえろ!』

いろは『ふえ!?』

清十郎『わしの家で何をやっている? こいつ、ただでは済まさんぞ!』

いろは『ご……ごめな、さい』

使用人『大旦那様、こちらは親戚の……』

清十郎『うるさい! とっとと警察へ突き出せえっ!』

いろは『ひっ……ごめ、なさい……ごめなさいぃ。許してくださいぃ』

かえで『まあ、どうしたの? いろは』

使用人『申しわけありません。大旦那様は認知症を患っ……』

清十郎『わしを侮辱するなっ! お前も首だーっ!』



 高そうな壺が割れ、観葉植物はなぎ倒され、使用人は引っ叩かれ、止めに入ったおじさまは突き飛ばされて頭を打った。


 ああ、思い出すだけでも身震いがする。

 やっぱり、あのおじいさんは大嫌いだよ。



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