18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~
結局、結婚式はふたりで決めた会場で、家族と友人と一部の親戚だけを招待することになった。
私たちは秋月家で同居することはなく、自分たちだけの家庭を築くことにしている。
遥さんはおじさまと一定の距離を保ったまま、以前と変わらない関係でいる。良くも悪くもならない、周囲から見ればいたって普通。
それでも彼は、実家を捨てるという選択をしなかった。
「素敵な式場だったねー」
私たちが決めた結婚式場は緑の森に囲まれた自然のあふれるところ。
会場に併設されたレストランは普段一般に開放されていて、料理も美味しいと評判なのだ。
「俺は満足していない」
「え!?」
「だってそうだろ? いろはが着るべきドレスの数が少ない」
「そ、そんなことないでしょ!」
今日はドレスの試着をしたのだけど、ものすごく時間がかかり、結局まだ決まっていない。
店のドレスのほとんどを試着し、遥さんはすべて写真に収めた。
「ああ……困ったな。これじゃ足りない。別の衣裳屋にも行こうか」
「いい加減にしてよ! 私は着せ替え人形じゃないよ!」
忘れていたけど、この人ちょっと変なんだった。
「まあ、いいか。結婚式は一度とは決まっていないしね」
「何回するつもり?」
「フォトウェディングなら何度やってもいいだろ。そうだなー、このあたりのスタジオ全部まわっていろんなシチュエーションでいろはのドレス姿を撮りたい。あ、そうだ。新婚旅行のついでに海外でも挙式しよう。夢が広がるだろ?」
ものすごく楽しそうに話す遥さんの表情が、今までで一番キラキラしている。
きっと、この日をずっと夢見ていたに違いない。
「仕方ないから付き合ってあげる」
なんて言ってみたけど、私も内心楽しみだった。