18婚~ヤンデレな旦那さまに溺愛されています~

 キスシーン、どうしよう。

 想像すると体がぞくっと震えて、熱くなって力が抜けて、すごく変な気持ちになっちゃうから。

 恥ずかしくて描けないよ!!


 ――綺麗――

 遥さんがぼそりと言ったあの言葉を思い出して、また頬が熱くなった。


「秋月? お前、何やってんの?」


 背後から急に声をかけられて、私は「わっ」と小さな悲鳴を上げた。振り返るとそこには……。


「伊吹くん」

「さっさと入れば? 突っ立ってると入れないんだけど?」

「ご、ごめんね」


 私は急いで部室に入り、彼のために道を開けた。

 伊吹くんは真顔でスタスタと歩いていつもの場所へ向かう。


 正直、伊吹くんのことが苦手だ。

 何を考えているのかわからないし、活動もせずにただ昼寝をしに来るだけだし、すごく話しかけづらい空気をまとっているし。


「やっほー、いぶっきー。今日も眠そうね!」

 小春が大声で話しかけると伊吹くんは不機嫌な顔で返した。


「うるせーよ。起こすなよ」

「だったら家で寝ればいいのにさー」

「家はばーちゃんがいて寝れないんだよ」


 小春と伊吹くんを見ていると、ちょっとうらやましくなる。

 こんなふうに伊吹くんと気楽に話せるなんて、小春はコミュ力が高いなあ。

 私ももう少ししっかりしないといけないなあ。


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