薬術の魔女の結婚事情
修学旅行九日目。
寝台汽車に揺られながら、薬術の魔女は首を傾げる。
「(……どうして、わたしが『薬術の魔女』だってわかった途端に変な目向けてくるんだろ)」
生兎でも、祈羊でもそうだった。きっと、薬猿でも同じような目線に晒されるかもしれない。
「(なんか、やな目線……)」
薬術の魔女は座席がわりの寝台に座ったまま、壁に寄りかかり溜息を吐いた。
「(……みんなが、変な目で見るんだもんなぁ……)」
向けられた目線のほとんどが、嘲笑と、憐れみが混ざったような目線だった。
奇妙なものを見る目やなんだか気持ち悪い目、怖がる目ならば、今までも何度か向けられたことはある。
大抵が『薬術の魔女』を好ましく思っていないものだが、それ以上に好意的な視線を受け取っていたので今までは気にすることはなかった。
「(あんまり、行きたくないけど……)」
ぱたり、と寝台に横たわる。
「(今のところ、実害はないからいいか……)」
目を閉じて、汽車の発する音を聞いていた。