【1月書籍化&コミカライズ配信中!】今宵、この口づけで貴方様を――
現在活躍する呪術師の中でも、『予知眼ノ術』を使える者はここ近年耳にしたことがない。


新たな黒百合家が誇る呪術に、きっと帝も驚くことだろう。

次の神導位も黒百合家に決まっていると、貴一と八重は乙葉に期待を寄せていた。


そして、その5年に一度行われる新たな神導位を選定する呪披の儀。

それが、あと4日後に迫っていた。


最近の食事時は、決まって呪披の儀の話ばかりだ。


長方形の大きなテーブルを見通すように、上座に座って食事を取るのが当主の貴一。

それを囲むようにして座る八重と乙葉。


和葉はというと、3人とは離れた反対側の席で1人寂しく食事をする。


「お父様。わたくし、帝様の前で緊張せずに呪術をご披露できるか不安だわ…」


眉を下げながら、ステーキをきざむナイフとフォークを持つ手を止める乙葉。
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