【1月書籍化&コミカライズ配信中!】今宵、この口づけで貴方様を――
妖狐の玻玖。


妖狐の寿命は人よりも遥かに長く、玻玖は人と人が争い合って殺し合う時代を目の当たりにしてきた。


玻玖にとっては、つまらない日々の繰り返しだった。


呪術の力を持て余し、暇潰しで力を貸したのが徳川家だった。


徳川家は、これまでの玻玖の功績を認め、『最高の呪術師』という意味合いを込めて、『神導位』という地位を新たにつくり、玻玖を任命した。


不思議な呪術の力は忌み嫌われ、差別の対象となる時代もあり、江戸時代となっても『呪術師』と名乗らず普通の人間として静かに暮らす呪術師も少なくはなかった。

しかし、『東雲玻玖』という呪術師が将軍様をそばでお守りし、助言を授ける『神導位』になったという知らせは、日本中の呪術師たちを沸き立たせた。


もしかしたら、自分も将軍様のお眼鏡にかなうかもしれない。
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