魔王と呼ばれた結界師は王女様がお好き
(女は度胸って姉さまたちも言っていたし!)

 意を決したユリアは、顎を捕らえていたジェラールの手を両手で掴み逃れる。
 そして近づいた白磁の様な肌理(きめ)の細かい頬にその愛らしい唇をくっつけた。

(……あら? 度胸ではなくて愛嬌だったかしら?)

 ふと言葉の違いを思い出しながら離れると、思ったより驚いた表情があった。
 少なくとも意表はつけたらしい。

「そ、その……会ったばかりですし。……これではダメですか?」

 小首を傾げて問いかける。
 彼の手を取っていたため、お願いしている様にも見えたかもしれない。

「っ! あ……なっにを⁉」

 ダメに決まっている、とでも言われると思ったが、その薄い唇から出てきたのは戸惑いの声。
 そして、白い肌がみるみる真っ赤に染まっていく。

(まあすごい、人の顔ってここまで赤くなるものなのね)

 ものの見事に赤く染まった顔に驚く。
 だが、ここまで赤いと発熱でもしているのではないだろうかと少し心配になった。
 魔王と言えども、病人なら優しくしなくては。

「あの、大丈夫ですか?」

 熱を測ろうと手を伸ばすと、バッと距離を取られた。
 自分から近付いてきたというのに、真逆のことをされてユリアは目を瞬かせて驚く。

「こ、こんなに積極的だとは思わなかった」

 少しは顔の赤さを落ち着かせて、ジェラールは口元に手を寄せて呟く。
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