【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
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今日も今日とてホダカ・ホールディングスのオフィスは慌ただしい。
「おい、SY社の再生案、出したの誰だ」
背後にある営業統括部の島で低い声が放たれる。厳しい口調に営業部の空気が固まったのがわかった。
「俺ですけど」と申し出たのは同期の宮田くんだ。声音からして不貞腐れていて、こちらがハラハラしてしまう。
「宮田、今回の再生計画の趣旨を理解してるか? セオリー通りじゃ通用しないと何度も言っただろ」
三十二歳という若さで営業統括部を取りまとめる冴島部長の声は、静かなのにびりびりと心臓を震わせるような迫力がある。私だったら委縮してしまうのに、怖いもの知らずの宮田くんは不服そうに言い返す。
「けど、不採算の店舗が全体の三分の一以上あって、赤字を一刻も早く止めないといけないですよね」
「そう、最優先課題だ。だからこそお前のこの再生計画だと破綻する。従業員の解雇、賃金カットなんて以ての外だ。『きさらぎ食堂』は人の要素が強い。接客も商品の一部だ。もっと想像力を働かせてやり直せ」
ばさりと書類を突き返された音が聞こえた。細い声で「はい」と答えた宮田くんが席に着く。そこに追い打ちのように冴島部長の声が飛ぶ。
「明日の昼までだ。一度確認する」