【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
「和花さ、あの冴島って男にも、付け込まれたんじゃないの」
一瞬、言葉の意味がわからずぽかんとする。それからすぐに首を振った。
「違う! 彼とは――」
「俺は、和花と終わったつもりなんかなかった!」
かぶせるように言い放ち、昴はじっと私を見下ろす。あの頃と変わらない黒目がちの瞳が切なそうに揺れている。
「自然消滅したつもりなんか、なかったよ……」
呻くようにつぶやいて、昴はうつむいた。
目の前の男性は細身のスリーピースを着こなして、どこから見ても『できる男』の風貌だ。そんな彼がリクルートスーツに身を包んでいたころはまだスーツの方に着られているみたいだった。
あの頃の表情を覗かせて、昴は私を見つめる。
「諦めないから」
射抜くような目線に、つい視線を逸らしてしまう。それでもハッキリ口にした。
「ダメ。困る」
昴は黙ったまま私を見下ろしている。しばらくして、ふうと息をつく気配がした。
「悪いけど、困らせる。また会いにくるよ」
私の頭をポンと叩き、昴は小さな公園を後にした。