【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
「CEOとは現地解散の予定なんだ。だから和花には悪いけど行きはひとりで来てもらって、現地で合流できるとありがたい」
視察帰りに温泉で疲れを癒すということらしい。
ひとりで気兼ねなくゆっくりできる大切な時間を、賢人さんは私と過ごそうとしてくれる。彼が自分のスケジュールに当たり前に私を組み込んでくれることが嬉しくて頬が緩んだ。
「全然大丈夫です。行きたい」
「わかった。宿は手配しておくから」
つながった手にきゅっと力がこもったとき、足元から幼い声が聞こえた。
「パパァ」
見ると賢人さんの足に小さな女の子が絡みついている。
「お、どうした? パパはあっちかな」
即座にしゃがみこんで女の子の目線に合わせると、彼は満面の笑みで近くのイチョウの木を指差す。女の子の父親らしき男性がカメラを片手に慌てたように駆けてきていた。
「どうもすみません! おいおい、パパはこっちだぞ」
イチョウ並木を写真に収めていたらしい男性が女の子を抱き上げる。指をくわえた彼女は不安げだった表情を崩して男性の胸にしがみついた。