【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい

 ぺこぺこと頭を下げながら去っていく彼らを見送る賢人さんの表情は優しげだ。もしかすると自身の甥っ子くんと重ね合わせたのかもしれない。

 賢人さんは五歳になる甥っ子くんを可愛がっていて、毎年誕生日パーティーにも参加している。

「女の子もいいな」

「かわいいですね」

 離れた場所にいた母親らしき女性と合流した三人家族をぼんやり眺める。女の子を肩車してイチョウの葉に近づける父親を、今度は女性がカメラに収めていた。

 休日の家族の風景に、胸が温かくなる。

 私もいつかあんなふうに家族をもてるだろうか。

 大切な人とふたりのあいだにできた子どもと、穏やかに過ごす休日。そのとき隣に立っているのが賢人さんならいいのにな。

「どこかでお茶してくか」

 低い声にはっとする。とっさに「はい」と出した声がひっくり返った。

「どうした? なんだか顔が赤いな」

「なんでもないです」

 まっすぐ注がれる瞳から慌てて視線を逸らした。

 私ってば、なんという妄想を。

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