【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
声を掛けると彼はいつもの優しい表情に戻る。ほっとして彼とともに玄関に向かった。
歩きやすさ重視のフラットなパンプスに足を差し込んで玄関ドアに手をかける。そのまま外に出ようとしたとき、背後から手を掴まれた。
振り向いたと同時に開けかけたドアが音を立てて閉じる。
賢人さんはまっすぐ私を見ていた。普段の柔らかな表情がほんの少し陰っている。
「賢人さん?」
どうしたんですか?
そう口にする前に引っ張られて広い胸に閉じ込められた。
「やっぱり、帰したくないな。あのアパートには」
「え?」
シャツから顔を上げようとしたとき、くぐもった声が落ちた。
「元カレが出入りしてたんだよな。あそこに」
心臓が小さく跳ねる。
賢人さんは普段から優しくて私のことを気遣ってくれる。年上ということもあるかもしれないけれど、いつも落ち着いていて感情的になることはほとんどない。
そんな彼が、自身の欲求を口にする。
「しばらく、うちに泊まってほしい」
背中に回された腕に力がこもる。
賢人さんの匂いを感じながら思った。
今、どんな顔をしてるのかな。