【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい

 電話が長引いているのだろうか、表に出ていった賢人さんが戻ってくる気配はない。閉じたままのドアを見やり、昴は私に視線を移す。

「俺だったらアパート引き払わせて同棲する。元カレの気配がする家になんていさせたくないし」

「一緒に住もうって言われたことならあるよ」

 言われっぱなしが悔しくて反論すると、昴は少し驚いたように眉を持ち上げた。

「いつ?」

「ええと……付き合いたての頃。半年以上前だけど」

 正確には七カ月前だ。指折り数えると、正面の彼は「はっ」と笑いまじりに息を吐いた。

「半年経つのに全然具体的に進んでないじゃん。やっぱ本気じゃないんだよ」

「そんなこと」

 ない、とは言い切れず声がしぼむ。

 賢人さんが本気かどうかなんて考えたことすらなかった。

 実際「あのアパートには帰したくない」と言われてこの一週間は一緒に暮らしている。けれど、それはあくまで一時的な話で『ふたり暮らしごっこ』みたいなものだ。

 住民票を移して本格的に同棲をするのとは意味合いが全然違う。

 私の様子を見て昴は勝ち誇ったように続けた。
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