【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい




 仲野坂駅のシンボルである三十三階建てのオフィスビル、レインボータワー。その二十二階に入居するホダカ・ホールディングスは食品系の中小企業を傘下に持つ持株会社だ。本社の従業員は四十名に満たないけれど連結社員数は千二百人を超える。

 優れた商品や技術力を持ちながら後継者不足や資金調達不足などの理由で事業継続が困難になっている会社をM&Aで子会社化し、グループ内の販路を利用するなど弱みを補い合うことで全体の利益向上を目指している。

 最高経営責任者でもある穂高(ほだか)社長は若干三十四歳。一年前に会社を一部上場に押し上げた辣腕で、本社のメンバーも少数精鋭の優秀な人材ばかりだ。

 冴島部長に怒られていた宮田くんも、ほかの会社にいればエース級の社員に違いない。つまりそれだけ冴島部長がキレ者で厳しい上司だとも言える。

「お先に失礼します」

 定時を一時間過ぎたフロアにはまだ半数くらいの社員が残っている。周囲に声を掛けてオフィスを後にし絨毯敷きの廊下を進んでエレベータのボタンを押す。ちょうど到着した箱に乗り込みながら、首から掛けたセキュリティカードを外してようやく息をついた。

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