【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
毎日メッセージのやりとりはしていたのに、一緒に暮らしている状態からいきなり一週間も離ればなれになったせいだろうか。
私から荷物を取り上げた彼が替わりに大きな手を差し出す。きょとんとしている私に微笑みかけ、彼はするりと指を絡ませ恋人繋ぎをしてきた。
温かな手の感触にぎゅっと胸が詰まる。
普段と変わらない優しさと安心感。ご主人様に会えて嬉しさを爆発させる犬みたいに喜びが込み上げる反面、どこか切ない気持ちにもなる。
「腹減ってるだろ。とりあえず昼食にしよう」
「もうお店の目星はついてるんですか?」
「ああ。人気店だからちょっと並ぶかもしれない」
エスカレータを降りると、ひんやりした十一月の空気が頬に触れた。駅前の街道沿いには温泉まんじゅうや名産品などのお土産物屋がずらりと軒を連ねている。
観光客で賑わった表通りから横道に入ってしばらく行くと、石塀に囲われた旅館のような建物が見えてきた。雰囲気たっぷりの行燈看板を指差して賢人さんが振り返る。
「ここだよ」
「へえ、湯葉のお店なんですね」