【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
新卒で入社して今年で五年目。経営管理部の業務にもだいぶ慣れてきたしやりがいがあって仕事は好きだけれど、やっぱり疲れる。
もともとぼんやりした性格だから、人の五倍くらい気を張らないと仕事にならないのだ。おかげで会社から離れると一気に気持ちが緩む。
セキュリティカードの裏側に挟んだ社員証に目を落とすと、写真を撮った頃の自分――つまりは大学を卒業したばかりのあどけない自分の顔と目が合った。
小松和花、二十七歳。
丸い大きな目のせいで童顔に見られる顔や平均ど真ん中の身長体重は五年前と変わらない。肩までだった髪は伸びて背中までのナチュラルロングになっている。メイクはむしろ最低限になったしスカート率が高いオフィスカジュアルは落ち着いた色合いが増えた。でもぼんやりした性格はそのままだ。
一階ロビーに着くと大理石のエントランスに靴音を立てて帰宅するビジネスマンの姿がちらほら見える。彼らに紛れて自動ドアを抜けると心地いい風にさらりと髪をさらわれた。
九月下旬の夜、ようやく涼しくなってきた秋の空にほんの少し欠けた月が浮かんでいる。
そういえばもうすぐ中秋の名月だっけ。