【極上溺愛】エリート鬼上司は無垢な彼女のすべてを奪いたい
社内恋愛であることは秘密だからオフィスでは必要最低限のことしか話さないけれど、そのぶんプライベートの彼は信じられないくらい甘々だ。
最初は戸惑ったものの、スキあらば示される愛情表現に、さすがに慣れてきたかもしれない。
「和花」
呼ばれて振り向くとダークグレーのスリーピーススーツをまとった長身の男性が立っていた。
「悪い、遅くなった」
「賢人さん。おつかれさまです」
口を開いたと同時にぐるるとお腹の虫が鳴いた。真っ赤になる私に、オフィスでの鬼っぷりを微塵も感じさせない笑顔を浮かべ、彼――冴島賢人は私の隣に腰を下ろす。
「ごめんな、腹減ってるよな」
私の頭をぽんぽんと撫でると、彼は手早く注文を済ませてくれた。
「会議、長引いたんですか?」
「ああ、CEOも思い切ったことをするよ。今回のM&Aは秘密裏に進めるそうだ」
「会社売却計画自体が猛反対にあってましたもんね。でも秘密裏になんて……」
「各銀行へは既成事実として株主の交代を通知するらしい」
穂高社長とのやりとりを話してくれる賢人さんはいつもどことなく嬉しそうだ。
うちの社長――代表取締役兼CEOの穂高壱弥は、その手腕も然ることながら、外見も芸能人かと思うくらい優れている。でも私は社長が少し苦手だ。