学校公認カップルの痴話喧嘩に遭遇してしまった。
しかし、認められない人というのはどこにでも居るもので。
ある日、西彩金のクラスまで押しかけていた女子集団がいた。
「アンタ、東くんのなんなの?」
美少女につっかかるだけあって、なかなか可愛い子の集団だった。
しかし西彩金には遠く及ばない。
女子集団は、下手な化粧で取り繕っているのが丸わかり。
対する西彩金は、化粧いらずのぱっちりお目々に長いまつ毛、つやもちのお肌と、理想をこれでもかと詰め込んだ完璧美少女なのだ。
現に、女子集団のリーダー以外は戦意喪失していた。
「ボクはその……」
「そのボクって一人称も気に食わないわ。とんだぶりっこね!」
「あの……」
「それに、そのズボンは何? 一応この学校は女子でもズボン履いていいことになってるけど、普通スカートでしょ」
そう言う彼女はミニスカートで、むちむちな脚をさらしている。
見えそうで見えないパンツが気になり、ついついそこに目が行きそうになる野次馬男子。
しかし、涙目の美少女、西彩金の破壊力の方が強かった。
「だ、だってぇ………」
「おい、なんの騒ぎだ?」
「銀雅……!」
ヒーローのように颯爽と現れたイケメン。
東銀雅が西彩金を背に庇い、女子集団に言ったのだ。
「こいつに手を出すんじゃねぇよ」
そして西彩金は恥ずかしそうに頬を染めるのだ。
東銀雅に見惚れてぼんやりしながらも去っていく女子集団の姿が見えなくなってから、彼は西彩金の身体をぺたぺた触る。
「大丈夫か!? どっか怪我とかしてねえか?」
「大丈夫だよ」
「大丈夫なわけねえだろ、こんなに涙溜めて……」
東銀雅は彼女の瞼に唇を寄せ、溢れる涙を吸う。
「も、もうっ。恥ずかしい……」
「見せつけてやれ」
両まぶたから、頬、鼻、額と、もはや涙とは関係のないところにも唇をおとす。
顔を両手で固定され逃げられないながらも、赤くなって唇を噛むのがいじらしい。
「ほら、噛まないで。傷になる」
「んーんー!」
瞼をうっすら開けながらも抵抗する様子に、彼は苦笑した。
「わかった、もうしないよ。………今のところはね」
最後につむじにキスを落としてから、体を離した。
その時、予鈴が鳴った。
「それじゃ、また次の休み時間に」
さらりと約束をして教室を出ていくイケメンの背中を、赤い顔のまま見送る美少女。
一部始終を見ていたクラスメートは、女子だけでなく男子も「キャーッ!」てなったね。
このカップル推せるって。
それから、彼らを邪魔するものは居なくなり、非公認ファンクラブも出来て、会員は100人を超えているらしい。
特に、西彩金の影響は凄まじく。
「彩金、スカート履かねえの?」
「もうっ!」
ある日、面白がる東銀雅の問いに、真っ赤になってか弱い拳を振るう西彩金。
そんなところも外野から見ると微笑ましい。
そして勘のいい女子は思い出した。
体育を半ズボンで受ける彼女の、美脚。
体育は男女で別れず成績で二分されるのだが、運動部が多数を占める上位組にいるにもかかわらず、西彩金の脚は美しい。
つまり、西彩金のズボンは、その内の白く綺麗なおみ脚を守るためである。
翌日には、スカートからズボンに変える女子が続出。
一部の男子はお通夜だった。