学校公認カップルの痴話喧嘩に遭遇してしまった。

案内されたのは、おしゃれな外観のワンルームマンションの一室だった。

「ここ、俺の家」

「銀雅は一人暮らしなんだよ」

「……へー、そうなんだ」

気のない返事をするので精一杯。
これはどういう状況だろう。

ニコニコする西彩金にカバンを物質にとられ、右手もとられている。
そこに注がれる東銀雅の凶悪な視線。
外だからか大袈裟に突っかかってくることはないが、それもいつまでもつか。

家に帰りたい。

そんな願いもむなしく、私たち三人を飲み込んだ部屋の鍵は閉められた。

「さて」

ベッドに腰掛けた西彩金と床に正座する私。
女王様と犬かな。

「南北さんのこと、氷晶(ひあき)ちゃんって、名前で呼んでもいい?」

「う、うん」

「よかったぁ。ボクのことは彩金って呼んでね」

「彩金さん」

「なぁに?」

小動物のようなつぶらな瞳で見つめられて、否はない。
許可すれば、ふわふわのピンクの花が咲くように笑った。

これが男の子かぁ………。
思い出して、気分が沈む。

「どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」
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