学校公認カップルの痴話喧嘩に遭遇してしまった。

私の感情の機微に気づく彩金は上機嫌のまま、私の顔を見つめた。

「おい、彩金、俺を見ろ」

「うるさい。銀雅は出ていって」

彩金は顎にかけられた手をパチンと振り払う。

「ここ、俺の家なんだが」

「代わりにボクの家使ってよ」

「家主を追い出して堂々と浮気か?」

「氷昌ちゃんの前で、誤解を生みそうなこと言うのやめてよね!」

彩金の両手を拘束して、ベッドに押しつける東銀雅。
股に膝を押し込み、抵抗を封じる。

これから年齢指定の展開でもあるのかな。
ということは私は当て馬という名の恋のスパイスか。
そうと分かれば話は早い。

「ごゆっくりー………」

カバンを回収して、そーっと玄関へ足を向ける。

「待って氷昌ちゃん!」

いつのまにか寝技で体勢逆転していた彩金に呼び止められた。

逃走失敗再び。

私はその場で回れ右して正座した。

「せっかく来てもらったのに、このバカがごめんね」

「帰れよ、イテッ」

スパーンっと彩金の平手が決まった。

「本当はもっと雰囲気のいいところで言いたかったんだけど……」

モジモジと頬を染める姿は美少女以外の何者でもない。

「ボク、氷昌ちゃんが好き」

「…………………へ?」

「ボクとつきあってください」

「俺は認めない! イタッ!」

邪魔に入る東銀雅を再び平手が襲った。

え、あれ?
今なんて言った?

「つきあう?」

「そう!」

「誰が?」

「ボクと氷昌ちゃん」

「あれ? ごめん、混乱してる……」

「うん。いきなりこんなこと言っても困るよね。返事は急がないから」

無理して笑っているのがわかる。
けど、そうじゃない。
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