この想い、21時になったら伝える

20. エピローグ

 ◇◇◇
 
 「は〜い、ご家族の皆さん、こちら向いてください!いきますよ〜。ハイチーズ!」
 
 パシャ。
 
 三年の月日が経ち、愛を重ねてきた五十嵐と梛七は、無事結婚することになった。最初の一年は、人目に触れぬよう、二人でひっそり関係を温めてきた。
 二年目に入った春に、梛七は五十嵐を連れて実家を訪れた。母・ひろ子は、梛七の彼氏が五十嵐であることに大喜びし、父・一茂は「君でよかった…」泣いていた。梛七の両親は五十嵐のことを「傑くん」と呼ぶようになり、一茂と五十嵐は、二人で釣りに出掛けることもあった。
 その後すぐ、梛七も五十嵐の実家へ挨拶に出向き、五十嵐の家族と顔を合わせた。父・勝は「わしの勘が当たったぞ〜、ほらみろ、がははは〜」と盛大に喜び、母・明美からは「内緒よ」と言って新しい宝石を一つ買ってもらった。妹・美央は、すっかり梛七の虜になってしまい「ななちゃ〜ん」「お姉ちゃ〜ん」と人懐っこく梛七を慕っていた。祖母・静子は、お仏壇の前で亡き祖父に「あの傑くんが、遂に結婚よ…あなた」と泣きながら報告していた。
 結婚が決まった三年目は、人目を気にせず堂々と街を歩き、患者たちもクリニックのスタッフたちも公認していた。結婚することが決まった時は「きゃ〜、嬉しい」「おめでとうございます!」「いや、もうお似合いだったんで、そうなって欲しいと思ってました」とスタッフたちから沢山の祝福を受けた。「クリニックの母はもう…」と藤原は誰よりも泣いていた。
 
 
 挙式を終え、結婚式の集合写真を撮り終えた五十嵐と梛七は、今から始まる披露宴の会場へ向かっていた。
 ボリューミーなチュールが広がった純白のドレス。特に胸下から広がるチュールが、梛七の華奢な肩と腕をより引き立てていた。五十嵐はグレージュの光沢のあるタキシードに身を包み、梛七が持っている花と同じ花を、胸元に刺していた。モデル体型の五十嵐は、とても様になっている。
 
 「傑、緊張してる?」
 
 「ううん。んなことねーよ」
 
 「本当?顔に書いてあるよ」
 
 「梛七があまりにも綺麗すぎんだよ…」
 
 五十嵐は、梛七のあまりにも美しすぎるドレス姿を、直視できないでいた。
 
 『それでは、間もなく新郎新婦の入場です。皆さま、盛大な拍手でお迎えくださ〜い』
 
 「行くぞ」
 
 「うんっ」
 
 五十嵐の左腕に右手を添えた梛七は、ガチャと開いた輝かしい扉の向こうに、足を踏み入れた。
 
 結婚式には、両家の親族、クリニックの全スタッフ、美歯会会長の渡夫妻、五十嵐の友人でもある先輩や後輩、同期の口腔外科医、歯科医たち、大学時代の友人、梛七の親友三人と、梛七の同級生など豪華な顔ぶれが揃っていた。
 
 五十嵐と梛七は、これでもかというぐらい、沢山の人に人生の門出を祝福され、晴れ渡った空の下、愛溢れる幸せな時間を過ごしたのだった。
 
 
 〈了〉
 
 
 あとがき
 
 はじめまして。花茂薫です。
 「この想い、21時になったら伝える」の小説を、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
 本棚に入れていただいたり、ファンになってくださったり、「梛七ちゃんの恋を応援しています」とお声をかけてくださったり、温かく見守ってくださったこと、心からお礼を申し上げます。
 
 初めての執筆ということもあって、拙い文章や表現であったこと、長々と書いてしまった章もあったりして、読者の皆さまには読みづらい思いをさせてしまったのではないか…と反省しております。
 今後は、もう少し読みやすいように(笑)パワーアップして、書いてまいります。
 
 また皆さまにお会いできる日を、楽しみにしております。
 
 最後に、叫ばせてください。
 「梛七ちゃん、いいなぁ〜〜〜〜!。五十嵐先生と結婚できて。やっぱ恋っていいなぁ〜〜〜〜!」
 二人がどこかで幸せに暮らしていることを願って…あとがきを終えたいと思います。
 
 それではまた、次の機会に。
 
                   
                 花茂薫
 
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