無能者だからと離縁された私は、「野獣王」の生贄妻となりました~じつは無能ではない私。あらたな旦那様の「真実の声」が可愛すぎて幸せ満喫中。クズな元夫と義姉は絶対に許せないので破滅してもらいます~
「こんなガタつく馬車でよく眠れるもんだ。昨夜から今日一日中馬車を走らせているおれの身にもなってもらいたいもんだ。馬を三度もかえなきゃならなかったんだぞ。まぁ、金貨二枚にはかえられんがな。もうすぐ国境だ。やっとおまえを放り出せる」

 だみ声はそう一方的に告げた後、いっさいきこえてこなかった。

 痛みをこらえつつ座席に座った。

 じょじょに記憶が戻ってきた。

(そうだわ。大階段で義姉に……。気を失ったのね。でっ、なぜ馬車に?)

 問わずにはいられない。

 先程の馭者の言葉を思い出し、推測する。
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