無能者だからと離縁された私は、「野獣王」の生贄妻となりました~じつは無能ではない私。あらたな旦那様の「真実の声」が可愛すぎて幸せ満喫中。クズな元夫と義姉は絶対に許せないので破滅してもらいます~
 わたしは、そんなところに生贄に行くわけで……。 

(大丈夫なの、わたし? ヘラヘラ笑いが彼らに通用するかしら?)

 自分自身に問うたとき、馬車が停止した。

「さっさと降りろ。奴らが近づいてくる。殺されるのはごめんだ」

 馭者が扉を開け、わたしの腕をつかんだ。

 激痛が全身を駆ける。

 悲鳴はガマンした。

 小柄な初老の馭者のうしろに、いくつもの騎影が見えたからである。
 みっともないことはしたくないし、きかせたくない。

 わたしは、月明かりのまったくない闇夜にオーディントン国に引き渡された。

 生贄として、祖国ウオーターズ帝国から永遠に去ることになったのだ。
< 20 / 375 >

この作品をシェア

pagetop