無能者だからと離縁された私は、「野獣王」の生贄妻となりました~じつは無能ではない私。あらたな旦那様の「真実の声」が可愛すぎて幸せ満喫中。クズな元夫と義姉は絶対に許せないので破滅してもらいます~
 二人とも、肩で息をしている。静かな試合場内に、彼女たちの荒い息だけが響き渡っている。

「この卑怯者っ! 逃げてばかりじゃない」
「そうよ。逃げてばかりいないで腰のそのやわな剣を使いなさいよ」

 彼女たちにまたクレームをつけられた。

 視線をそうとわからぬ程度にキャロルへ走らせる。

 彼女は、ずっと悠然と立ったままでいる。腰の大剣を抜かず、試合場の中央でただ立っている。

 まるで勝負の審判を行う者であるかのように。

 そのキャロルが、大きく自信満々に頷いた。

 そこではじめて、腰からレイピアを抜いた。
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