無能者だからと離縁された私は、「野獣王」の生贄妻となりました~じつは無能ではない私。あらたな旦那様の「真実の声」が可愛すぎて幸せ満喫中。クズな元夫と義姉は絶対に許せないので破滅してもらいます~
 困惑した。それは、向こうも同じみたい。

「とにかく、申し訳ありません。悪意があったわけではないのです。初対面の人に名乗る際は、いつも逆に名乗り、あとでその人が混乱するのを見るのがささやかな楽しみなのです」
「ったく、悪趣味以外のなにものでもない。兄貴、レディは疲れている。腹がいっぱいになったら、眠くなる」
「そうだった。レディ、あともう少しで到着です。到着まで、ひと寝入りしてください」

 お言葉に甘えることにした。

 というか、背もたれに背中をあずけて瞼を閉じたら眠ってしまっていた。
< 36 / 375 >

この作品をシェア

pagetop